脳梗塞再発予防
<抗血小板剤の適応>
・血流速度の速い動脈で形成される血栓は、血管内皮の損傷やプラークの破綻により血小板が活性化され、血小板凝集が契機に形成される血小板血栓
→ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞
★アスピリン:バイアスピリン、
クロピドグレル:プラビックス、チクロピジン:パナルジン
シロスタゾール:プレタール
●抗血小板剤の使用にはそれぞれで使い分けが必要
・アスピリンは出血リスクが高い。安価。
・チクロピジンは今はもう使用しない
・クロピドグレルはGood。効果はよいし安全性も高い。肝障害、皮疹など副作用はある程度ある。
・シロスタゾールは頭痛、頻脈がある。効果も安全性もあり。
★アスピリン
服薬中止後7日間効果持続。
75-150mgの内服で再発予防のエビデンスはあるが、出血のリスクがある。
消化管出血もリスクある。
6.5% 消化性潰瘍
29%にびらん性病変を認めた。
PPIは上記を優位に抑制。ピロリ感染者はリスク増大。
利点:エビデンス多い。早期から効果あり。安価。
欠点:出血が多い。アスピリン喘息のリスク。
→MRIでmicrobleedingの患者には使用を控える。高血圧がある場合は130/80を目指す。
★クロピドグレル、チクロピジン:チエノピリジン系
クロピドグレルはチトクロームP450による代謝を受ける。効果に3-5日かかる。服用中止後7日間持続。
アスピリンとの比較試験:CAPRIE試験
脳梗塞、心筋梗塞、血管死に関してクロピドグレルで良好。
動脈硬化病変が進行したハイリスク群ではアスピリンよりクロピドグレルが有効性期待。
チエノピリジン2剤とアスピリンの比較:Cochrane Review
2剤とも脳梗塞は減少させ、出血リスクは同等。
チクロピジンは皮疹、顆粒球減少が注意。クロピドグレルの方がチクロピジンより少なかった。
クロピドグレルとチクロピジンの比較試験もあり、有効性は同等だが、安全性はクロピドグレルの方が良好だったため、新規の投薬はクロピドグレルになっている。
クロピドグレルの良くない点としては、CYP-P450が代謝酵素であり、遺伝子型により効果が弱い人がいることと、オメプラゾールとの相互作用で効果減弱する。
ただ、その場合にイベント発症がどうなるかはまだ明らかではない。
利点:再発予防効果はバイアスピリンより良好。副作用は少ない。
欠点:不応性がありえる。3-5日かかる。肝障害、血小板減少、皮疹、顆粒球減少には注意が必要。
★シロスタゾール:プレタール
早期より効果発現。中止後48時間で効果消失。
CSPS試験:プラセボとシロスタゾールで脳梗塞予防効果あり。
CSPS2:シロスタゾールとアスピリンの試験。
アスピリンよりシロスタゾールの方が有意に脳梗塞予防。出血イベントも少ない。
シロスタゾールの特異的な副作用は、脳血管拡張による頭痛と頻脈。
利点:日本人でのエビデンスあり。血管拡張作用あり。誤嚥性肺炎予防効果あり。
欠点:頭痛、頻脈。頻脈による心疾患悪化のリスクがあるのでうっ血性心不全禁忌、冠動脈狭窄例は注意。
<DAPT:Dual antiplatelet therapy>
急性期から亜急性期であれば脳卒中再発予防効果があり、出血リスクを増悪させなかった。2015年ガイドラインでも推奨されている。
慢性期では治療ベネフィットよりも出血リスクが高い。
3か月以降は単剤が推奨される。
<抗凝固療法>
心原性脳塞栓症には抗凝固療法が必要。
・非弁膜症性 → CHADS2スコアで評価
・弁膜症性:リウマチ性MS、人工弁置換術後
ワーファリンはビタミンKがあるが、NOACはダビガトランに対するイダルシズマブのみ。
★ワーファリン
70歳以下:INR2.0-3.0
70歳以上:INR1.6-2.6
60%以上が基準値内でないと効果は発揮しない。
・CHADS2スコアではTIAがあると2点になり、年間4%のリスクになるので抗凝固療法が必要になる。
CHADS2スコア:http://www.xarelto.jp/ja/home/medical-care-calculator/chads/
・脳梗塞既往の人に、抗凝固療法+抗血小板剤になると脳出血リスク増大。
・抗凝固療法中の出血のリスク評価は、HAS-BLEDスコア使用。
http://www.xarelto.jp/ja/home/medical-care-calculator/hasblend/index.php
・75歳以上、50kg以下、CCR30-50以下ではNOAC減量、中止が必要。
・弁膜症性の場合はNOACの適応はなく、ワーファリンを使用する。
NOAC(DOAC:direct oral anticoagulants)
2011年3月 直接トロンビン阻害薬:ダビガトラン:プラザキサ
2012年以降 活性化第Ⅹ因子選択的阻害薬
リバロキサバン:イグザレルト
アピキサバン:エリキュース
エドキサバン:リクシアナ
DOACはいずれも効果発現は速やかで半減期は12時間程度。
ビタミンKと関係なく、食事制限不要。
エリキュースとリクシアナは併用禁忌薬なし
プラザキサとイグザレルトではHIV薬や抗真菌薬が不可。
DOAC間での効果比較試験はない。
全てのDOACで脳卒中、全身塞栓症に対して予防効果はワーファリンと同等かそれ以上で
リスクに対しては同等かそれ以下であった。
ワーファリンは脳出血時に止血反応で必要なⅦ因子も抑制するが、DOACは影響しないので脳出血リスクが低くなると言われている。さらにDOACで脳出血が発症しても血腫の大きさはワーファリンより小さい。
★ダビガトラン:プラザキサ
有効性を期待したいときは高用量、出血リスクが高い場合は、低用量を選択可能。
腎排泄が85%なので腎機能低下は注意が必要。
消化器症状が若干他よりも多い。
★リバロキサバン:イグザレルト
日本独自の試験もしている。J-ROCKETAF試験。
★アピキサバン:エリキュース
ARISTOTLE試験。高齢者、腎機能低下でも一貫して有効性、安全性が証明。
腎排泄が他より少ない。消化管で排泄もあり。
★エドキサバン:リクシアナ
DOACの課題
伏見AFregistryにおいてCHADS2スコア3点以上でも、実際に抗凝固施行は64.8%だった。それは超高齢、認知症、腎機能低下、転倒リスク、抗血小板剤併用などがある。
CCR15以下ではあれば全てのDOACは禁忌。
エドキサバンでは85歳超高齢者の試験でも有効性、安全性が示されたが、試験に入るような患者とreal worldの患者とは異なる点に注意。
DOACは飲み忘れで効果が減弱するので注意が必要。
<降圧療法>
2015年ガイドライン
・脳梗塞の再発予防は140/90以下が強く勧められる。
・両側内頚動脈狭窄症、主幹動脈閉塞では過度の降圧は注意。
・ラクナ梗塞、抗血栓薬内服中では、より低い降圧130/80を目指す。それは脳出血のリスクが高いため。
・どこまで下げていいかの結論は明確ではないが、収縮期は120以下までしなくてもよいとコンセンサスあり。
<高脂血症>
脳梗塞既往者の目標
・LDL120以下、HDL40以上、TG150以下
・アテローム血栓性脳梗塞予防の観点からLDL70程度まで低下させる意味がある可能性がある。
・75歳以下には高強度スタチン治療(治療前より50%以上の低下)、76歳以上は中強度スタチン治療(30-50%のLDL低下)が推奨。
高強度スタチン
アトルバスタチン:リピトール 40-80mg
ロスバスタチン:クレストール 20-40mg
だが本邦で上記治療は保険適応もなく難しい。
スタチンの隔日投与について
内服後にCK上昇、肝障害、胃腸症状などがある場合、隔日内服をすることがある。
ある試験でも薬理学的に隔日内服でも有効性は見込めそう。
(日本医師会雑誌 第146巻 特別号S277)
・血流速度の速い動脈で形成される血栓は、血管内皮の損傷やプラークの破綻により血小板が活性化され、血小板凝集が契機に形成される血小板血栓
→ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞
★アスピリン:バイアスピリン、
クロピドグレル:プラビックス、チクロピジン:パナルジン
シロスタゾール:プレタール
●抗血小板剤の使用にはそれぞれで使い分けが必要
・アスピリンは出血リスクが高い。安価。
・チクロピジンは今はもう使用しない
・クロピドグレルはGood。効果はよいし安全性も高い。肝障害、皮疹など副作用はある程度ある。
・シロスタゾールは頭痛、頻脈がある。効果も安全性もあり。
★アスピリン
服薬中止後7日間効果持続。
75-150mgの内服で再発予防のエビデンスはあるが、出血のリスクがある。
消化管出血もリスクある。
6.5% 消化性潰瘍
29%にびらん性病変を認めた。
PPIは上記を優位に抑制。ピロリ感染者はリスク増大。
利点:エビデンス多い。早期から効果あり。安価。
欠点:出血が多い。アスピリン喘息のリスク。
→MRIでmicrobleedingの患者には使用を控える。高血圧がある場合は130/80を目指す。
★クロピドグレル、チクロピジン:チエノピリジン系
クロピドグレルはチトクロームP450による代謝を受ける。効果に3-5日かかる。服用中止後7日間持続。
アスピリンとの比較試験:CAPRIE試験
脳梗塞、心筋梗塞、血管死に関してクロピドグレルで良好。
動脈硬化病変が進行したハイリスク群ではアスピリンよりクロピドグレルが有効性期待。
チエノピリジン2剤とアスピリンの比較:Cochrane Review
2剤とも脳梗塞は減少させ、出血リスクは同等。
チクロピジンは皮疹、顆粒球減少が注意。クロピドグレルの方がチクロピジンより少なかった。
クロピドグレルとチクロピジンの比較試験もあり、有効性は同等だが、安全性はクロピドグレルの方が良好だったため、新規の投薬はクロピドグレルになっている。
クロピドグレルの良くない点としては、CYP-P450が代謝酵素であり、遺伝子型により効果が弱い人がいることと、オメプラゾールとの相互作用で効果減弱する。
ただ、その場合にイベント発症がどうなるかはまだ明らかではない。
利点:再発予防効果はバイアスピリンより良好。副作用は少ない。
欠点:不応性がありえる。3-5日かかる。肝障害、血小板減少、皮疹、顆粒球減少には注意が必要。
★シロスタゾール:プレタール
早期より効果発現。中止後48時間で効果消失。
CSPS試験:プラセボとシロスタゾールで脳梗塞予防効果あり。
CSPS2:シロスタゾールとアスピリンの試験。
アスピリンよりシロスタゾールの方が有意に脳梗塞予防。出血イベントも少ない。
シロスタゾールの特異的な副作用は、脳血管拡張による頭痛と頻脈。
利点:日本人でのエビデンスあり。血管拡張作用あり。誤嚥性肺炎予防効果あり。
欠点:頭痛、頻脈。頻脈による心疾患悪化のリスクがあるのでうっ血性心不全禁忌、冠動脈狭窄例は注意。
<DAPT:Dual antiplatelet therapy>
急性期から亜急性期であれば脳卒中再発予防効果があり、出血リスクを増悪させなかった。2015年ガイドラインでも推奨されている。
慢性期では治療ベネフィットよりも出血リスクが高い。
3か月以降は単剤が推奨される。
<抗凝固療法>
心原性脳塞栓症には抗凝固療法が必要。
・非弁膜症性 → CHADS2スコアで評価
・弁膜症性:リウマチ性MS、人工弁置換術後
ワーファリンはビタミンKがあるが、NOACはダビガトランに対するイダルシズマブのみ。
★ワーファリン
70歳以下:INR2.0-3.0
70歳以上:INR1.6-2.6
60%以上が基準値内でないと効果は発揮しない。
・CHADS2スコアではTIAがあると2点になり、年間4%のリスクになるので抗凝固療法が必要になる。
CHADS2スコア:http://www.xarelto.jp/ja/home/medical-care-calculator/chads/
・脳梗塞既往の人に、抗凝固療法+抗血小板剤になると脳出血リスク増大。
・抗凝固療法中の出血のリスク評価は、HAS-BLEDスコア使用。
http://www.xarelto.jp/ja/home/medical-care-calculator/hasblend/index.php
・75歳以上、50kg以下、CCR30-50以下ではNOAC減量、中止が必要。
・弁膜症性の場合はNOACの適応はなく、ワーファリンを使用する。
NOAC(DOAC:direct oral anticoagulants)
2011年3月 直接トロンビン阻害薬:ダビガトラン:プラザキサ
2012年以降 活性化第Ⅹ因子選択的阻害薬
リバロキサバン:イグザレルト
アピキサバン:エリキュース
エドキサバン:リクシアナ
DOACはいずれも効果発現は速やかで半減期は12時間程度。
ビタミンKと関係なく、食事制限不要。
エリキュースとリクシアナは併用禁忌薬なし
プラザキサとイグザレルトではHIV薬や抗真菌薬が不可。
DOAC間での効果比較試験はない。
全てのDOACで脳卒中、全身塞栓症に対して予防効果はワーファリンと同等かそれ以上で
リスクに対しては同等かそれ以下であった。
ワーファリンは脳出血時に止血反応で必要なⅦ因子も抑制するが、DOACは影響しないので脳出血リスクが低くなると言われている。さらにDOACで脳出血が発症しても血腫の大きさはワーファリンより小さい。
★ダビガトラン:プラザキサ
有効性を期待したいときは高用量、出血リスクが高い場合は、低用量を選択可能。
腎排泄が85%なので腎機能低下は注意が必要。
消化器症状が若干他よりも多い。
★リバロキサバン:イグザレルト
日本独自の試験もしている。J-ROCKETAF試験。
★アピキサバン:エリキュース
ARISTOTLE試験。高齢者、腎機能低下でも一貫して有効性、安全性が証明。
腎排泄が他より少ない。消化管で排泄もあり。
★エドキサバン:リクシアナ
DOACの課題
伏見AFregistryにおいてCHADS2スコア3点以上でも、実際に抗凝固施行は64.8%だった。それは超高齢、認知症、腎機能低下、転倒リスク、抗血小板剤併用などがある。
CCR15以下ではあれば全てのDOACは禁忌。
エドキサバンでは85歳超高齢者の試験でも有効性、安全性が示されたが、試験に入るような患者とreal worldの患者とは異なる点に注意。
DOACは飲み忘れで効果が減弱するので注意が必要。
<降圧療法>
2015年ガイドライン
・脳梗塞の再発予防は140/90以下が強く勧められる。
・両側内頚動脈狭窄症、主幹動脈閉塞では過度の降圧は注意。
・ラクナ梗塞、抗血栓薬内服中では、より低い降圧130/80を目指す。それは脳出血のリスクが高いため。
・どこまで下げていいかの結論は明確ではないが、収縮期は120以下までしなくてもよいとコンセンサスあり。
<高脂血症>
脳梗塞既往者の目標
・LDL120以下、HDL40以上、TG150以下
・アテローム血栓性脳梗塞予防の観点からLDL70程度まで低下させる意味がある可能性がある。
・75歳以下には高強度スタチン治療(治療前より50%以上の低下)、76歳以上は中強度スタチン治療(30-50%のLDL低下)が推奨。
高強度スタチン
アトルバスタチン:リピトール 40-80mg
ロスバスタチン:クレストール 20-40mg
だが本邦で上記治療は保険適応もなく難しい。
スタチンの隔日投与について
内服後にCK上昇、肝障害、胃腸症状などがある場合、隔日内服をすることがある。
ある試験でも薬理学的に隔日内服でも有効性は見込めそう。
(日本医師会雑誌 第146巻 特別号S277)
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